5月24日(土)リニア中央新幹線問題を考えよう!開催 レポート
24日午後に「リニア中央新幹線学習会・地下トンネルの環境破壊は無いのか」と題して、和光大学ポプリホール鶴川にて学習会が行われた。リニア路線近くの鶴川での学習会は、昨秋に続く二回目となる。
一週間前からの駅頭や近隣住宅地へのチラシ配布、タウンニュース誌掲載もあってか約60名が参加した。
●まず主催団体である「リニア市民ネット・東京」の懸樋 哲夫氏から、JR東海のリニア計画の概要と主な問題点について解説。
●引き続き、能ヶ谷在住の地質学者・坂巻幸雄氏から、トンネルなどについて問題提起があった(先生と呼ばれるのは違和感あり、という事なので敢えてその呼称は避けた。)
品川から名古屋へと計画されるリニア新幹線。そのルートは、大深度地下トンネルで大田区から多摩川下を通り、川崎市内を抜けて麻生区片平に作られる立坑を経て町田市に入る。
町田市内ルートは、そこから広袴調整池と真光寺川を横断、鶴川団地バス終点から和光学園地下を通り、五反田の元青山学院グラウンドに立坑を建設。更にそこから、小野路・小山田の鶴見川源流域となる北部丘陵地帯を西進し、小山・上小山田境界部にもう一つの立坑を設置。続くル ートは西に延びて相模原市に入り、最初の停車駅である橋本に至る。町田市域はほぼ10.9kmで、すべて大深度地下トンネルとなる。
この大深度地下トンネルでは法律で「公益性」があるなら地上の地権者に補償は無し、とされている。その為、現在建設中の東京外環道地下新5号線では住民との問題が発生している。地質は、町田では表層の赤土(関東ローム)の下は主に砂(稲城砂層)で、地下水に影響が考えられるほか、地中に潜んでいるヒ素などが流出する恐れや、ガスなどで作業員に犠牲が出る恐れもある。地下水位についてJR側は電算機予測で影響軽微としているが、実測データによる検証が乏しく信用できるとは言えない。
地下深い為、真光寺川付近ではトンネルは海面下レベルを通り、片平の立坑は80m にもなる。乗降りも、深すぎる為不便で公益性も失われる。さらに工事による残土の量・土質・処理サイトも示されず、JR側は「必要があれば補足調査する」と計画変更はさせない姿勢だ。これでは「上越新幹線中山トンネル」工事で起きた、大出水事故も起きかねない。
●その後、参加者から質疑応答があった。
問「法律的に、地権者を黙らせる法律があるのか」
⇒答「大深度地下法はトンネルを作るため、”土地所有権が上空・地下に及ぶ”とする民法を制限するもの。制定時から業界などに『国の横暴だ』とする反発があった。」
問「超電導磁石は冷却に大量の電力が要るのでは?」
⇒答「磁気浮上のため超電導磁石が必要で、電力も大きい。原発についてはJR説明会では言及ないが、余所でのJR会長発言 では原発再稼働を繰り返し主張している。」
問「立坑の空気の出入りなどは?」
⇒答「今の計画では衝撃波などどれくらいか不明。その減衰の為、車体先端は数十メートル尖り、線路は地上部にもカバーが懸けられる」(※筆者注:JR説明では立坑には開閉式遮音シャッターを設けるとしている。)
問「沿線には老人施設や学校も多いので心配ないか?」
⇒答「本来環境が良い所に作る施設。疑問の声が何故上がらないか。大深度地下問題など、町田でも説明会をJRなどに要請すべきだ。」
問「県などからの意見が出たとは?」
⇒答「残土問題など町田市長から意見も出た。他に港区では騒音・振動などについて。他の沿線各県知事などからも意見は多く出ていて、JR東海のHPに在るが,閲覧の仕方が難しい。」
問「残土は何処に運ぶのか。多摩斎場近くで道路工事があるのはダンプの為では?」
⇒答「土置場とも、説明なし。説明会によると小山田では工事期間は7年続く。」
問「汚染土壌どうなるのか。都留市実験線近くでは”鉱毒の基準超え”等あったが。JR資料では鉱山位置など間違い多い。調査は工事施工後とは?」
⇒答「調査の試掘点は粗く、又掘れば(酸化して?)流れ出す毒がある。広袴では天然のヒ素が存在し得る。更に岐阜県内にはカドミウムもあり。」
●その後、質問以外に意見も出された。
・残土搬出口である川崎・ヨネッティー付近にはピーク時に毎時84台分トラックが出入りして道を塞ぐため、反対運動も起きている。
・町田市の政策課により真光寺町内会に説明会が在ったが、市は話を聞いて 「大丈夫」と言うだけ。都に連絡するのみなのか。
・小山田の方より道路拡張工事がはじまっており、立て坑の工事と関係があるのではと不安の声があった。
・今のメディアはリニア反対意見に好意的だが。原発問題同様、今後はどうか?
・残土処理の問題だけでは「うちの庭は嫌」論理。そうならぬ様。何でも遅すぎる、という事は無し。
*司会者から「リニア学習会など初参加者は?」と挙手してもらうと約30人が挙がった。半数がこれまでの説明会など参加できなかったことになる。
*坂巻氏は高齢にもよらず送迎・謝礼も断られ、快くアドバイザーを引き受けてくださった。「地質屋は下ばかり見て歩く変な人種」等と学者らしからぬ態度で、わかりやすく解説して下さった。